Your smile once again
「笹原?」
「ん?」
「少しだけ、ゆっくり行きたい」
「……いいけど、本当に大丈夫か?具合悪く無いか?」

私はふるふると首を横に振る。

「なんかね、」
「うん?」

私の顔を覗き込む笹原。

「もうちょっと、一緒にいたい」
「-----っ⁉︎」

あれ、私変なこと言ったかな?

「佐々木、それどういう意味で言ってる?」
「どうって?」
「なんでそんなこと、俺に言うの?」
「……」

そりゃ、笹原と一緒にいたいからだけど……。

「その、一緒にいたい相手って誰でもいいの?」

「……」

笹原のしたい事がよくわからなかった。

「……佐々木。そういうこと、他の奴らにも言う?」
「……言わない」
「……それってどういうこと?」
「ごめん、笹原。言ってることわかんない」

私は正直な感想を言った。

「ごめん。焦りすぎた……」
「なんのこと?」
「なんでもないよ。ゆっくり、行こうか?」
「うん」

笹原は、私といるのが嫌なのかもしれない……。

「ごめんね」
私が思わず呟くと、彼は優しく微笑んだ。

「なんで佐々木が謝るの?」
「なんか、今日」

パタパタっと傘に雨粒があたり、私が動くたび、水滴が落ちる。

「……お母さんが死んだ日に似てる」
「……っ」
「この辺がもやもやして、不安な感じ。だから具合が悪くなったのかも……」

笹原が悲しそうに私を見る。

「だから、誰かが隣にいないと不安になる」
「……うん」
「ごめんね」

もう一度、謝る。

「大丈夫」

笹原はそう言って笑ってくれた。

「俺のこと、頼っていいからな」

「ん……」

私は心から頷いた。
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