Your smile once again
……私は、なにを動揺しているのだろう。

笹原が誰にでも優しいことなんて、わかり切ったことじゃないか。
なのになんで、こんなに変な気分になるんだろう。
まるで逃げてきたみたいだ……。

変な感情に惑わされるなんて。

最近の私は少しおかしい気がする。

「危ないっ‼︎」

声とともに、腕を引かれる。
目の前にはカートを押す、女の人。

ぶつかりそうだった。

「すっ、すいませんっ!」


慌てて謝った。

「ったく、危なっかしいな。本当に」

聞き慣れた声に、安心と嬉しさを感じてしまう自分がいた。

「笹原」
「一人で勝手にどっかいくなよ!急すぎるし」
「……」

私は笹原の顔を見つめてぼんやりと聞いていた。

「最近、佐々木なんか変だぞ。

具合悪いのか?

いつもぼーっとしてるし。

って、聞いてる?」

「え、うん。ごめん。
……湖春は?」

「ベンチ」
「……」

嬉しい。

笹原が、湖春をおいて私を追いかけてくれたことが。

色々な思いが、胸の中でぐるぐる回って。

全てがショートしそうになる。

「佐々木?」

また、私を呼ぶ声。
なんだ、これ。

「早く終わらせて帰ろ」


止まれ、止まれ。
胸の奥から何かが溢れて、広がって、止められない。
私は笹原にばれないように呼吸を整えた。
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