Your smile once again
その子は鞄を持って教室を出て行ってしまった。

一瞬シーンと静まり返った教室。

しかし、すぐに騒がしくなる。

まるでなかったかの様に。


私はしまった扉と、嘉島くんを交互にみた。


そんな私に気づいた嘉島くん。

「いいよ。どうせ、またすぐ元通りだから。気にすんな」
「あの、ごめんなさい」

思わず謝ると、嘉島くんは始めて顔を上げた。

「なんで謝るんだよ?」

呆れ笑いだった。


「私のせいで、嘉島くんが」

「大丈夫。明日にはあいつも忘れてるよ。それが分かってるからみんなも普通なんだろ。……あと、嘉島でいいよ」


そういう、ものなのか。

高校に入ってからまともに人付き合いをしていなかったので、忘れてしまっていたらしい。


彼は平然としていた。
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