Your smile once again
「……笹原」
見上げると、近くて見るのは久しぶりの笹原の顔。

「えっと……」

私は口ごもった。

笹原の服にはタキシードに胸元にリボンがついていた。どうやら不思議の国のアリスの、うさぎらしい。


笹原が無言で、歩き出した。私も慌てて追いかける。


……やっぱり不機嫌。


講堂に着くと、笹原は看板を立てた。

私たちは看板を挟んで立つ。


「おとぎ話カフェにぜひ来てください 」


笹原は真面目に客引きを始めた。

「特大パフェがありますよー」


私もクラスメイトに、言われたとおりのセリフを言う。

棒読みだけど。

いつしか人が一杯になり、私たちの声は届かなくなって行った。

一時間もすると、大分人が校舎に入ったようで、ほとんど誰もいなかった。


「……佐々木」


急に声をかけられて、肩がびくりと反応する。


「な、何」
「疲れてないか?」
「えっ……」
「ずっと、立ちっぱなしだし」
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