Your smile once again
否定しかけた私を遮るように、頭上から声がした。


同じ委員会だった先輩が、三年生校舎から、私たちがいる中庭へ身を乗り出していた。


ブンブン手を振ってくる。
私は会釈を返した。

「うはー。あれ三年生だよ。

流石だねぇ。琴那は」

「学年一……、学校一じゃない?」

うんざりしてしまった。


「あぁっ!そういえばもうすぐ、琴那の誕生日だねっ!!」
「そういえばそうだねー」
「怜音、覚えてた!すごくないっ?」

怜音は、食後のポッキーを頬張りながら自慢げだ。

「うーん。偉い偉い」

香澄が、半ば呆れながら適当に返す。


「……琴那?」

私はそんな二人の会話をぼんやりと聞いていた。放心状態だ。

「そっか……。誕生日、か……」

誕生日を忘れていたというのもあるが、
私には誕生日、という習慣が無かったのだ。
自分の誕生日を覚えている人がいるなんて、不思議な気分だった。
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