ボーダーライン
最悪だと思っていた一番前の席は、意外に快適だった。後ろの席より実は目立たなくて、静かにしていれば先生に注目されることもなくて、私はあいかわらずぼんやりと授業をやりすごせることに少し嬉しくなった。期末テストの後の授業は次のテスト範囲に入るから真面目に勉強しなくちゃいけないのに、テストが終わった解放感でクラス中がなんとなく上の空で。心はみんな夏休みに何をしようとかそんなことばかりでいっぱいだったと思う。

(前髪伸びてきたなー。そろそろ切らなくちゃ)

私は視界に時折被さる前髪を留めようと、ペンケース代わりのポーチに入れていたヘアピンを探した。先週はあったヘアピンはポーチの中で他のものに紛れてしまったらしく、中身を全部出して点検するのも面倒で私は前髪のうっとおしさを我慢することにして頬杖をついて黒板をながめた。
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