縛鎖−bakusa−
話し込んでいる内に時刻は20時になろうとしていた。
それに気付きヤバイと思った時、誰かの走る足音が聞こえ、
「あっ!いたー!」と聞き慣れた声もした。
「姉ちゃん、何やってんだよバカ!
どれだけ探したと思ってんだ。
買物行くって家を出たのは6時だよ?今は8時、分かってる?」
「ごめん!あっ、夕食の用意…」
「腹減ってカップラーメン食ったよ」
「ごめん…」
弟はレジ袋を右手に持ち、左手で私の腕を掴む。
引っ張られてベンチから立ち上がった私は沢村幸則を見た。
まだ心の鎖の外し方、聞いていない…
『本題に入っていなかったね、ごめんね。
君の心の鎖を外すのは簡単な事だよ。
“イイ事した、人の役に立てた"そう思える事をしてごらん?
その鎖は成仏させた霊が置いて行った負の感情。
それを浄化するには、プラスの感情が必要だと言うこと。
イイ事を幾つかすれば簡単に鎖は消えるよ。
やってみて…もし上手く行かなかったらまた相談に乗るから。寿荘までおいで』