縛鎖−bakusa−
私は頷き沢村幸則に
「ありがとうございます」とお礼を言った。
それを見て弟は肩をビクッと揺らして目を見開く。
「姉ちゃん…そこに誰か居るの…?」
「大丈夫だよ。彼はいい人。親身に相談に乗ってくれたんだ。
私にとって悪い事は何もないよ。
そう言う霊体も居るって初めて知った」
「いい人…幽霊が…?」
見えていない弟は、空っぽのベンチに猜疑的な視線を向けている。
「沢村さん、さようなら」
『千歳ちゃん、マ・タ・ネ』
心に巻き付く鎖は不快だけど、彼と話したお陰で少しは楽になった気がした。
30歳の大人が16歳の愚かな小娘を騙すのは簡単…
そんな風に疑う事は無かった。
―――――…