縛鎖−bakusa−
 


私は頷き沢村幸則に

「ありがとうございます」とお礼を言った。



それを見て弟は肩をビクッと揺らして目を見開く。



「姉ちゃん…そこに誰か居るの…?」



「大丈夫だよ。彼はいい人。親身に相談に乗ってくれたんだ。

私にとって悪い事は何もないよ。

そう言う霊体も居るって初めて知った」



「いい人…幽霊が…?」




見えていない弟は、空っぽのベンチに猜疑的な視線を向けている。



「沢村さん、さようなら」


『千歳ちゃん、マ・タ・ネ』



心に巻き付く鎖は不快だけど、彼と話したお陰で少しは楽になった気がした。



30歳の大人が16歳の愚かな小娘を騙すのは簡単…

そんな風に疑う事は無かった。



―――――…





< 102 / 159 >

この作品をシェア

pagetop