縛鎖−bakusa−
「買物はついでです。ずっと沢村さんを捜してました」
『僕に会いたかったの?
アハハッ 女子高生からの愛の告白?
参ったなぁ、おじさんとても嬉しいけど死んでるしなぁ』
「違います。鎖が外れないんです。
教えて貰った通りイイ事して人の役に立っているつもりなのに…
どうしてですか?何が足りないのですか?」
沢村幸則は今日も親身に話しを聞いてくれた。
この人はやっぱりイイ人だ。
改めてそう感じた。
『なるほどね…
君はこの数週間、近所のゴミ拾いや家族サービスを頑張って来た訳か。
エライねぇ、感心感心。
けどね分かったよ。量の問題だ。
イイ事の量が後少し足りない』
「量…ですか」
『君がした事はさ、確かに周囲に感謝されたけど、一つ一つが小さいんだ。
感謝される量、役に立ったと感じる量、それが後少し足りないよ。
大丈夫、僕には見えている。
イイコト量のゲージはもう少しで一杯だ。
もうすぐ、あと少しで君の心の鎖はちゃんと外れる』
「本当ですか?」
『ああ、僕は嘘は言わないよ。
小さな親切あと一つくらいで、鎖は外れるんじゃないかな?』