縛鎖−bakusa−
沢村さんが階段から私を見下ろして言う。
『千歳ちゃん、大丈夫だよ。
僕がここでミカと会話したからと言って、僕の鎖は外れない。
この鎖を外すにはもっと具体的なアクションが必要なんだ。
だから、僕の言葉を伝えて貰えないかな?』
そう言われてホッとした。
全面的に沢村さんを信じている私は、彼の言う通りにした。
「ミカさん、あの…沢村さんは確かにそこに居ます。
リク君が指を差している所に、階段の手摺りに右手を掛けてあなたに微笑んでいます」
ミカさんは涙を流しながら頷いて、愛しそうに階段を見つめていた。
『ミカ…突然死んでしまって済まない。
随分と悲しませて苦労させてしまったね…ごめん。
それと、ありがとう。
リクを元気に真っすぐに育ててくれてありがとう』
「あなた…うっ…うう…」