縛鎖−bakusa−
 


この夫婦は今も深く愛し合っているのだと、ヒシヒシと感じていた。



二人の会話を繋ぎながら背景が見えて来た。



前に公園で話し込んだ時、彼は心不全で急死したと言っていた。



急に夫に先立たれ悲しみに暮れ、これからの生活に不安を抱く彼女を支えたのは、

現在の夫「謙次」と言う人だ。



私も前に一度見掛けた。

細い目、薄い唇、尖った耳、何と無く暗いオーラを感じてしまった人だ。



その人は沢村幸則の親友だった。


親友が急死し、その妻を励ましている内に、

沢村幸則の代わりに守りたいと思う様になったらしい。




沢村幸則はミカさんに聞いた。



『謙次は優しい?』



「ええ、とても。

今でもあなたを想って泣く私を、受け止めて支えてくれる。

謙次さんはあなたの代わりになろうと頑張ってくれるの…

リクもすっかり懐いて…

今やっと安らぎを感じられる様になったわ…』



『そう…謙次はイイ奴“だった"からね。

僕の一番の親友“だった"からね…』



< 112 / 159 >

この作品をシェア

pagetop