縛鎖−bakusa−
この夫婦は今も深く愛し合っているのだと、ヒシヒシと感じていた。
二人の会話を繋ぎながら背景が見えて来た。
前に公園で話し込んだ時、彼は心不全で急死したと言っていた。
急に夫に先立たれ悲しみに暮れ、これからの生活に不安を抱く彼女を支えたのは、
現在の夫「謙次」と言う人だ。
私も前に一度見掛けた。
細い目、薄い唇、尖った耳、何と無く暗いオーラを感じてしまった人だ。
その人は沢村幸則の親友だった。
親友が急死し、その妻を励ましている内に、
沢村幸則の代わりに守りたいと思う様になったらしい。
沢村幸則はミカさんに聞いた。
『謙次は優しい?』
「ええ、とても。
今でもあなたを想って泣く私を、受け止めて支えてくれる。
謙次さんはあなたの代わりになろうと頑張ってくれるの…
リクもすっかり懐いて…
今やっと安らぎを感じられる様になったわ…』
『そう…謙次はイイ奴“だった"からね。
僕の一番の親友“だった"からね…』