縛鎖−bakusa−
 


『ああ、ミカと会話させてくれた君への感謝。

リクが無くしたクマのぬいぐるみ、押し入れの奥の使っていない布団の中にあるから、探して渡してあげて。

抱いて寝るくらい大好きなぬいぐるみなのに、無くしちゃって泣いていたからさ』



「分かりました!」




沢村幸則はニッコリ笑うと階段を摺り抜け下に降り、どこかへ消えてしまった。



「ミカさん、沢村さん居なくなりました」



まだ涙目の彼女は目元を手で拭いながら

淋しそうに「そう…」と呟いた。




―――――…


その後ミカさんの家に上がらせて貰った。



私のイイ事ゲージを一杯にする為に、沢村幸則が教えてくれたクマのぬいぐるみ、

それを探させて欲しいとお願いすると、

ミカさんは少し驚いた後、お礼もしたいからどうぞ上がってと言ってくれた。



2DKの狭い部屋は、子供の玩具や干してある洗濯物で余計に狭く感じた。



雨で閉め切っていた部屋の中は蒸し暑く、汗が流れる。



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