縛鎖−bakusa−
「散らかっていてごめんねー。
片付けた端からリクに散らかされるから、最近はどうでも良くなっちゃって…
あ、暑いよね?今クーラー入れるから待ってね」
彼女はそう言いながら私に座布団を勧め、
冷蔵庫からペットボトルの緑茶を出してグラスに注いでいる。
ぬいぐるみ探しの前に一先ずテーブルに向かい、
私の為に出してくれた緑茶とお菓子に向かう。
リク君は隣の部屋で、
段ボール箱一杯に詰め込まれた玩具を全部畳みの上にぶちまけて、
目当ての玩具を探している。
「リク!全部出さないの。
一つずつ遊びたい物だけ出すの。分かった?」
「はーい!」
良いお返事だけど、リク君は片付ける気はない様だ。
小さな子供がいると片付かない。
さっきミカさんが独り言の様に言い訳していた事を実感させてもらった。
リク君が一人遊びしている畳みの部屋に小さな仏壇があった。
位牌は一つ。
間違いなく沢村幸則の位牌だろう。
供えられた仏花と林檎。
離れた位置から何と無く仏壇を眺めていると、遺影がない事に気付いた。
我が家には曾祖父の代からの大きな仏壇がある。
天井近くの壁にはご先祖様達の遺影が飾られ、母の遺影も一番端に掛けられている。
しかしこの家には仏壇はあっても遺影はない。
あれ?と疑問に思い、仏壇だけじゃなく二つの部屋全体をぐるりと見回すが、
沢村さんの写真は一枚も飾られていなかった。