縛鎖−bakusa−
 


キョロキョロしていると、

自分の分のコップを持ったミカさんが、私の向かいに座りながら聞く。



「何か珍しい物でもある?」


「いえ…

沢村さんの写真が一枚もないなと…」



そう言うとミカさんは笑顔を崩し、眉をハの字に傾けた。



「うん…飾ってあった写真は全て捨てられちゃって…遺影も…」



「…… 今のご主人にですか?」



「ええ、そう。

でもね、悪い意味に取らないでね。ちゃんと理由があるのよ」




ミカさんが説明した理由とはこう言う事だった。



沢村さんを思い出し時々涙を流すミカさん。


その姿を見た今の旦那さんは、

写真を見ると過去に引きずられるだけだから片付けようと言ったそうだ。



ミカさんが早く前を向ける様にと、沢村さんの写真を処分したのだと言う。



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