縛鎖−bakusa−
 


彼女はまるで自分に言い聞かせる様に呟いた。



「謙次さんは本当に優しい人よ…

沢村は謙次さんの親友なのに…

私の為に親友の写真を泣く泣く処分したの…」




それは優しさなのだろうかと…疑問に思った。



私なら死んだ母の写真を捨てられたら嫌だ。

何て酷い事をするのだと怒る。



けれど…ミカさんの場合は親子ではなく夫婦間の問題だ。


その気持ちを理解できないのは、私がまだ子供だからなのだろうか…



ミカさんは今の旦那さんがいかに優しいかを、

なぜか必死に私に説明する。



別に私は「それは優しさじゃない」とも

「その人は間違っている」とも言う気はないのに。



そんな話しに相槌を打っていると、

リク君が「遊ぼ!」と言って私にウサギのぬいぐるみを渡してくる。



私にはウサギを渡し、リク君が持っているのはテレビでやっている戦隊物のヒーローフィギュアだ。



ヒーローVSウサギちゃん?

明らかに戦闘力に差があるよね。



ミカさんが「ふふっ」と笑いながら教えてくれる。



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