縛鎖−bakusa−
沢村幸則のやり残した想いとは、自分の死の真実をミカさんに伝えたかったと言う事だ。
私を騙し操って、自分の願いを叶えた彼の魂は、今はもうこの世にない。
クマのぬいぐるみが真実を暴露した後、
震えながら泣き崩れるミカさんの背後に彼を見た。
彼はもう嘘の笑顔を作ってはいなかった。
酷く悲しそうな顔をして、霊体特有の陰気さを露わにして、
妻子を見つめた後に私に向けて頭を下げた。
足首の鎖がカチャリと外れ消えて行く沢村幸則。
完全に消える前に彼は私にこう言った。
『君を利用してすまない…
けれど心の鎖の外し方について嘘は言ってないよ。
君は僕達家族にイイ事をしてくれた。とても感謝している。
だからほら、君のイイ事ゲージは一杯になった。
心の鎖は消えただろう?
一つ付け足すと………………――――――』
その言葉を残して彼は消えた。
その後は声も聞こえず霊気も感じない。
そして…
私の心の鎖もスッと溶ける様に無くなった。