縛鎖−bakusa−
 


あんなに外したいと思っていた心の鎖。

けれど素直に喜べなかった。



心の異物が消え、久々の爽快感を感じるが…

また一年寿命を縮めてしまったと後悔する気持ちもある。



良かったと喜ぶべきか?

それとも騙された事に怒るべきか?



判断の難しい気持ちを抱えたまま数日を過ごした。



―――…


大して重たくもないレジ袋に溜息をつきながら、雨の中を家路に急ぐ。



歩く度に、息をする度に、心に巻き付く新たな鎖がジャラジャラと不快な音を立てる。



水谷徹の鎖は消えたが、今度は沢村幸則の鎖が私の心に巻き付いていた。



心に鎖がなかった期間は数日だけ。



沢村幸則が消えて数日後の朝、目覚めると心に新たな鎖が巻き付いていた。



今度の鎖は水谷徹の物より重たく感じる。

より怨みの気持ちが強いと言う事か……



信じていた親友に殺され愛する者を奪われた彼の怨みは、

こんなにも暗く重くドロドロした物かと驚いていた。



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