縛鎖−bakusa−
サイゴ ノ クサリ
1
ふと気が付くと暗がりの中にいた。
ここはどこだろうと辺りを見回して、あのトンネルの中だとすぐに分かった。
コンクリートの壁に黒いシミ。
足元のアスファルトからは冷気が立ち上る。
小さな振動を感じ天井を見上げると、ガタンガタンと走り去る電車の音が響く。
帰らなければと思った。
トンネルの出口はすぐそこに見えている。
半円形の光りは温かく優しそうで、
早く冷たいトンネルから抜け出し光りを浴びたいと強く思った。
一歩二歩と歩き、後一歩でトンネルの外に出られると思った時、
誰かに右足首を掴まれ動けなくなる。
出口はすぐそこ。なのに出られない。
焦って右足首を見ると…鎖が巻き付いていた。
鎖の先は…数メートル先でトンネルの壁に埋まる様に消えている。
なに…これ…?
私は生きている。死んだ記憶はない。
それなのにどうして…?
冷汗が背中を伝い、恐怖に鳥肌が立つ。
何とか鎖を外そうともがいていた。
引っ張ったり足首を抜こうとしたり…
それでも外れる気配のない鎖。
焦りが焦りを呼び、気が狂いそうになる。
力任せに引っ張り続けていると、鎖が擦れ足首の皮膚がムケ、血が染みだした。