縛鎖−bakusa−
サイゴ ノ クサリ

 


ふと気が付くと暗がりの中にいた。

ここはどこだろうと辺りを見回して、あのトンネルの中だとすぐに分かった。



コンクリートの壁に黒いシミ。

足元のアスファルトからは冷気が立ち上る。



小さな振動を感じ天井を見上げると、ガタンガタンと走り去る電車の音が響く。



帰らなければと思った。

トンネルの出口はすぐそこに見えている。



半円形の光りは温かく優しそうで、

早く冷たいトンネルから抜け出し光りを浴びたいと強く思った。



一歩二歩と歩き、後一歩でトンネルの外に出られると思った時、

誰かに右足首を掴まれ動けなくなる。



出口はすぐそこ。なのに出られない。



焦って右足首を見ると…鎖が巻き付いていた。



鎖の先は…数メートル先でトンネルの壁に埋まる様に消えている。



なに…これ…?

私は生きている。死んだ記憶はない。

それなのにどうして…?



冷汗が背中を伝い、恐怖に鳥肌が立つ。



何とか鎖を外そうともがいていた。

引っ張ったり足首を抜こうとしたり…



それでも外れる気配のない鎖。

焦りが焦りを呼び、気が狂いそうになる。



力任せに引っ張り続けていると、鎖が擦れ足首の皮膚がムケ、血が染みだした。



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