縛鎖−bakusa−
「何で?
私にはまだまだ寿命は残されているのに何で?
やだよ…誰か…誰か助けて!!鎖を外して!!」
大声で叫ぶ声がトンネル内に反響する。
自分の叫びの余韻が消えた時、真後ろに彼の声を聞いた。
振り返ると亮介君が立っていた。
いつもと同じ姿。
緑色のジャンパーにグレーの迷彩柄のズボン、紺色の運動靴。
額には赤い血を一筋流して私を見上げていた。
いつもと同じ12歳の悲しい霊体…
だが違う点もある事にハッと気付いた。
彼の右足首に巻かれた鎖が無かった。
そして今日は泣いていない。
明るく嬉しそうな顔して私に笑い掛ける。
『千歳、僕の鎖を貰ってくれてありがとう!』
「え…?」
意味が分からなかった。
私は亮介君の想いは背負っていない。
彼の下に母親を連れて来た事はないし、成仏させてもいない。
それに、生ある私にとって鎖は心に巻き付く物であり、
霊体の様に足首に付けられたりはしない。