縛鎖−bakusa−
 


弟には言っていない。

私がどれだけの願いを叶えて来たのかは言っていない。



私を頼るその顔を見たら言える筈がない。


母もきっと…

こんな気持ちで私達に日々笑い掛けていたのだと、身を持って知った。



私も笑って弟に言う。



「大丈夫。無視しているから。心配しないで」



「…… 頼むよ。

姉ちゃんが死んだら多分…父さんも俺も堪えられない…」



「うん…」




酷く辛そうな弟の顔を見て、これではいけないと改めて思った。



もう止めようとは何度となく思って来たが、今度こそ本当に止めよう。



駄目だ、このままでは本当に家族を残して早死にしてしまいそう。



もうやらない。

もう願いを叶えない。



でも……

心に巻き付く今の鎖はすごく重たいから…

もう少し軽めの鎖に取り替えて…

その後は、誰の想いも背負わない。




――――…



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