縛鎖−bakusa−
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軽めの鎖。
この世に残した想いが恨みつらみじゃない、霊体を探していた。
冷たい雨の降る初冬、制服にコートマフラー姿で傘を差して町をうろつく。
雨の日はそこかしこにカレラの存在を感じる。
バス停の列の最後尾に並ぶスーツ姿の男は…霊体。
喫茶店の壁に顔だけ突っ込んで中を覗いている少女も霊体。
パン屋の軒先で雨宿りしているおばさんの肩に、
手を掛けニヤニヤしているお祖父さんも霊体。
さ迷うカレラはうようよいるが、足首の鎖はどれも重そうに見えた。
ジャラリジャラリと重たく暗く響く鎖の音。
それを聞きながら、自分の心に巻き付くこの鎖とどっちが重たいのかを、想像の秤(ハカリ)にかける。
軽そうな鎖が中々見付からない。
まるで値踏みする様な視線でカレラを見ながら、数時間町をうろついた。
これと言った鎖を見つけられない内に、雨は止んでしまう。
冬空に弱々しい太陽が顔を覗かせると、
光を避ける様にカレラは姿を隠してしまった。