縛鎖−bakusa−
しかし…今の私は違った。
おどろおどろしい怨念の鎖に巻かれ続けること数年で、
心はすっかり汚染されてしまった。
亮介君の足首の鎖…
哀れな少年の悲しい想いを具現化した鎖…
それを見て思うのは、
重いのか?軽いのか?
ただそれだけ。
膝を抱え顔を伏せる亮介君の前から動かずにいると、彼が顔を上げて私を見た。
今日はなぜ立ち去らないのかと不思議そうな顔をしている。
「その鎖…軽そうだね…」
『え?』
数年振りに口をきいた時、入口の方向に生ある人間の足音が聴こえた。
ハッとして入口を見た亮介君。
目を大きく見開き
「母さんだ!」と叫んで駆け出した。