縛鎖−bakusa−
「それは…亮介が亡くなる一週間程前に作った物です。
あの時流行っていたアニメの戦闘ロボット、
買ってとねだられたけど、クリスマスまで我慢しなさいって…買いませんでした。
だから亮介は自分で作ったんです…
今思えば、買ってあげれば良かったと…後悔しています」
悲しい後悔にうっすらと涙を浮かべる母親。
それを私は無表情で見ていた。
普通なら同情の涙を一緒に流すのがセオリーなのだろうが、
私の心は黒く汚染されている。
まさか一週間後に息子が亡くなるとは思わないから仕方ないじゃないかと、
ただ冷静に思うだけだった。
ハンカチで目元を押さえ彼女は言う。
「ごめんなさい…それで、そのロボットが何か?」
「これを今から壊します」
亮介君が最後に作った紙粘土の赤いロボット。
それを片手で掴み頭上に振り上げた。
「えっ!?や…止めて!!
どうして?お願い止めて!
それは亮介の…ああっ!!」
慌てて私の手からロボットを取り返そうとする彼女の前で、
絨毯目掛けて力一杯投げ落とした。
ゴトンと低く鈍い音を立て、ロボットは壊れた。
頭と両腕と片足がもげ、胴体には沢山の亀裂が走る。