縛鎖−bakusa−
淡々と説明する私を見て、指輪を見て、
彼女はゆっくりと息を吐き出し、それからぽつりぽつりと話し始めた。
「…… そう…だったの…
どこで無くしたか分からなくて…主人も亮介も知らないと言って…
家中探しても見つからなくて…
これ、母の形見なんです。
だから無くした事が凄くショックだった…」
「はい、亮介君はそれを知っていました。
あなたが必死で指輪を探し、見つからないと肩を落とす姿に、
自分がとんでもない事をしたのだと気付きました。
でも…言い出せなかった。
怒られるのは分かっている。
怒られるだけじゃなく、大好きなお母さんに嫌われるかも知れない。
そう思って打ち明けられず、後悔を引きずったまま事故で死んでしまった…
亮介君は今でもあのトンネルにいます。
あなたに打ち明け謝るまでは成仏出来ないのです」