縛鎖−bakusa−
3
あの後、亮介君の元に母親を連れて行った。
「亮介君、お母さん連れて来たよ。
ルビーの指輪もちゃんと返したからね」
大きく頷く亮介君は、母親に抱き着き満面の笑顔を見せる。
触れると霊障が…なんて言う必要はないだろう。
彼の鎖は怨念ではない。
純粋さと正直さで縛られた鎖とでも言うべきか…
他の霊体は危険だが無垢な魂にはきっと触れても大丈夫。
私の通訳を介して親子は12年振りに会話する。
『母さんごめんなさい…
僕嘘ついてた…本当にごめんなさい』
「母さんこそごめんね…
今までここに来られなくてごめんね…
12年も気付いてあげられなくてごめんね…
辛かったね…良く頑張ったね…」
『怒ってないの?』
「怒ってないよ。
指輪を返そうとしてくれた、亮介の優しい気持ちが嬉しいよ」
『良かったー!あっ!鎖が外れた!
母さん見て、外れたよ?
僕やっとトンネルから出られるよ!』
カチャリと音を立て、亮介君の足首の鎖は壊れて外れた。
外れた鎖は薄くなり、やがて消滅したかの様に見えなくなる。