縛鎖−bakusa−
亮介君が天に召されてから一週間が過ぎた。
初冬の冷たい雨は雪に変わり、街を白く染めていた。
朝起きると窓にはびっしりと霜が付き、
レースの様な雪の結晶が朝日を浴びてキラキラと輝いていた。
清々しく爽やかな一日の始まりだ。
弟の為に朝からパンケーキなんて焼いていた。
サラダにフルーツ、ハムエッグに珈琲牛乳。
眠たげな目を擦り弟が起きて来て、いつもと違う朝食に驚いていた。
「何で?何かいい事あった?彼氏でも出来た?」
朝は大抵トーストと牛乳か、ご飯に鮭フレーク、時々味噌汁付き。
普段はそんな簡単な物しか用意しない私だから、驚かれるのは無理もない。
「彼氏はいないよ。
たまにはこう言う朝食もいいでしょ?
今の私は物凄い爽快感の中にいるんだ。
生まれ変わったみたいな気分。
それでお洒落な朝食作りたくなったの」
「良く分かんないけど…良かったね」
亮介君を成仏させてから一週間が経つが、
私の心は今も白いままで、新しい鎖も巻き付いていなかった。
いつもなら鎖のない期間を3〜4日味わった後に、次の鎖に縛られる。
でも今回は違った。