縛鎖−bakusa−
全ての始まりは…
この場所で…
12歳の哀れな少年と話した事だった…
そして最後もやはり…
このトンネルで…
幼い魂を救済したのが原因だ…
トンネルの中はいつも冷たく…薄暗く…
不気味な霊気が漂っていた…
通り抜ける風の音は…
まるで亡者が啜り泣く声の様に…悲しくこだまする…
入口はすぐそこ…
出口もすぐそこ…
だけど私には遠すぎて…出る事は叶わない…
右足首に付けられた鎖の行く先は…
黒いシミが浮く灰色のコンクリートの壁の中…
引っ張っても…もがいても…自力で外す事は出来ない…
俯きながら制服のスカートを両手でギュッと握りしめた…
そんな私の前をスーツ姿の弟が、何も気付かず通り過ぎる…
弟は今…25歳。
生きている彼は背も伸びて肩幅も広くなり、一人前の大人に成長していた…
一方私は…
18歳の高校三年生の冬のまま…
トンネルを出て行く弟の背中を、今日も恨めしげに眺めるだけ…