縛鎖−bakusa−
母は仏間の壁の天井近くに掛けられた祖母の遺影を指差した。
「祖母」と言っても写真の中の彼女は老人ではない。
私の祖母は人生を36年で終えた。
その頃母は16歳。今の私と同じ年齢。
私が生まれる遥か昔に祖母は他界している。
会った事もない彼女だが、目元の少し垂れた感じとポッテリとした鼻の形が私に似ていて、
遺影の中で微笑むその顔を見る度悲しい感情が沸き起こった。
早死になんてしたくない。
ちゃんと大人になって結婚して子供を産み、その孫も見てシワシワのお婆ちゃんになるまで長生きしたい。
母もそうだと思っていた。
「霊体を無視しろ」と私に繰り返し言い聞かせていた母。
当然母も長生きしたいと思っていて、これから先も私と父と弟の側で笑っている物だと思っていた。
しかし……
私が高校に入学して数日が過ぎた春、母は急死した。