縛鎖−bakusa−
チラリと台所に視線を向け、流し台に伏せられた炊飯釜が目に入り文句を言った。
母が亡くなり家事は協力して頑張ろうと話したのは、そんなに遠い話しじゃない。
けれど、どうしても負担は私に来る。
弟はこんなんだし、会社勤めの父は夜は10時を過ぎないと帰って来ない。
「忘れてた!」
ゲームのコントローラを置いて慌てて米びつを開ける弟にまた溜息をついた。
三つ下の弟は13歳。
トンネルの亮介君の年齢を一つ追い越した。
母の代わりに私がこの子を育てて行かなくてはならないのだ。
霊体の願いを聞き命を削って行けば…
子供や孫なんて遠い未来の話しじゃなく、弟を育て上げる事も出来ないかも知れない。
やっぱり無理…
自分の命を削り亮介君を救うなんて…無理……
―――――…