縛鎖−bakusa−

 


その後数日間、晴天の日が続いた。


トンネル内の霊体の数は少なく、幾らか楽に通る事が出来る。



亮介君はあれから私に話し掛けてこなかった。



いつも膝を抱えた姿勢で顔を伏せ、誰かがトンネル内に入って来る度に視線を向けるが、

それが彼の母親ではないと分かるとまたすぐに顔を伏せた。



壁際でうずくまる彼。

その前を通り過ぎる時、いつも右足首の鎖に目を向けてしまう。



外す事の出来ない鎖…

やり残した想いの詰まった重たい鎖…



俯く彼の前を無言で通り過ぎた時、背後でジャラリと鎖の擦れる音がした。


亮介君が足をわずかに動かしたのだろう。



その重苦しい音が私の胸を締め付ける。



彼は「助けて」とはもう言わないが、鎖がジャラジャラと訴える。



彼をこのままにして平気なのかと……





重苦しい気持ちを引きずったまま学校へ着いた。



自席に座りノートでパタパタ扇いで自分に風を送る。



7月に入り暑さが増してきた。

汗ばむ首筋に黒髪が張り付いて気持ち悪い。



パタパタと扇いで涼んでいると、美里がやって来る。



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