縛鎖−bakusa−
3
その後数日間、晴天の日が続いた。
トンネル内の霊体の数は少なく、幾らか楽に通る事が出来る。
亮介君はあれから私に話し掛けてこなかった。
いつも膝を抱えた姿勢で顔を伏せ、誰かがトンネル内に入って来る度に視線を向けるが、
それが彼の母親ではないと分かるとまたすぐに顔を伏せた。
壁際でうずくまる彼。
その前を通り過ぎる時、いつも右足首の鎖に目を向けてしまう。
外す事の出来ない鎖…
やり残した想いの詰まった重たい鎖…
俯く彼の前を無言で通り過ぎた時、背後でジャラリと鎖の擦れる音がした。
亮介君が足をわずかに動かしたのだろう。
その重苦しい音が私の胸を締め付ける。
彼は「助けて」とはもう言わないが、鎖がジャラジャラと訴える。
彼をこのままにして平気なのかと……
重苦しい気持ちを引きずったまま学校へ着いた。
自席に座りノートでパタパタ扇いで自分に風を送る。
7月に入り暑さが増してきた。
汗ばむ首筋に黒髪が張り付いて気持ち悪い。
パタパタと扇いで涼んでいると、美里がやって来る。