縛鎖−bakusa−
暑さと良心の呵責でテンションがた落ちの私と違い、彼女はやけに嬉しそうだ。
私の前の席は他の子なのだが勝手に座り、転がっていたシャープペンシルを勝手に手に取る。
芯をカチカチさせて長く伸ばして遊びながら
「ふふふ」と私に笑い掛けた。
「美里…その笑い方気持ち悪い」
「ひどっ。
折角千歳に超イイ話し持って来てあげたのに」
私に超イイ話し?
上機嫌だから、てっきり美里の好きな悠紀先輩関係の話しかと思ったのに違うのか…
と思ったが、やっぱり美里は「悠紀先輩がね…」と話し始めた。
美里は一週間前にやっと先輩と会話する事が出来た。
彼女から話し掛けたのではない。
見ているだけで十分と言って、バスケの試合や練習を見に行ったり、
時間割を調べて廊下ですれ違うようにしたり…
そんな小さな努力に天が情けをかけた。