縛鎖−bakusa−
「え…えーと…バスケが嫌い…とかですか?」
「千歳ちゃんて天然ちゃん?
俺一応バスケ部キャプテンね。
俺の前でバスケ嫌いとか悲しー事言わないでよ〜」
「あっごめんなさい!」
「ハハッ 冗談冗談。慌てる顔も可愛いー。
部活入んない理由はさー、最近やっと教えてくれたんだけどー、
家の為にバイトして金入れないとダメなんだって。
エライだろー?コイツはスゲェよ。
俺ならそんなん出来ない。バスケやりたいしー」
そう説明されて素直にエライと思った。
潤一先輩は見た目だけじゃなく、中身もしっかりした素敵な人なのだと。
しかし…
左隣の彼は、透明な顔を私の耳元に近づけ低く囁いた。
『ウソ…全部ウソ…
そいつがバイトしてるのは…女と遊ぶ金が欲しいから…』
湿気を感じる声が耳に忍び込み、冷気を浴びる左半身にぶわっと鳥肌が立つ。
けど…気にするもんか。
霊の言葉なんて聞かない。
話し掛けるな…煩い…
「それでさー、勉強とバイトしか興味なかった潤一がさー、
千歳ちゃん見て、スゲェまじな顔して俺に頼んで来てさー。
ビビった。真面目な奴だから、こいつにそんな頼みされるなんて予想外。
なー千歳ちゃん、どう?こいつ結構かっこよくね?
見た目も中身もイイ奴よ?」
『ウソばっかり…こいつら揃ってサイテーだ…
君が来る前に話してた…この夏何人の女とヤレルか勝負してるって…
ヤラレルヨ…君も…隣の友達も…』