縛鎖−bakusa−
嘘だ…そんなの…信じない…
霊の話しなんて信じない…
どっかに消えろ…
潤一先輩は無口な人だった。
幾分照れた顔して悠紀先輩の話しに相槌を打つくらい。
そんな所にも好感を抱く。
いかにもチャラい悠紀先輩とは違う雰囲気。
きっと真面目で誠実で…
こんな人に想われたら幸せな恋愛が出来ると思う。
私は潤一先輩を信じる。
霊の言葉より、私をイイと言ってくれる生ある人間を信じたい…
潤一先輩を見詰めていると初めて目が合った。
瞬時に耳まで真っ赤になり、恥ずかしくて俯いた。
「千歳ちゃん」
初めて名前を呼ばれた。
心臓が壊れそう…
大きく速い自分の心拍を、耳のすぐそばで聞き取れる。
名前を呼ばれて顔を上げた。
もう一度目を合わせると、潤一先輩は爽やかな笑顔を見せる。
「次の日曜、良かったら遊びに行かない?二人で」
話し掛けてくれた…しかもデートのお誘い…
舞い上がる気持ちを止められなかった。
「はい!是非!嬉しいです!」
食い気味に即答すると、皆に笑われてしまう。
美里は自分の恋が実ったかの様にはしゃいでいた。
悠紀先輩はニヤニヤしながら友人の肩に拳をぶつけ、
潤一先輩は…白い歯を見せ「可愛いね」と言ってくれた。
『カワイイネ…バカで…』
左隣の彼が透明な手をゆっくりと持ち上げ、私の髪を撫でる。
『カワイイネ…騙されやすくて…』