縛鎖−bakusa−
鏡の前で慣れないメイクを頑張りながら潤一先輩を想っていると……
ジャラリと鎖の音がした。
ハッとして体を固くする。
しかし…
身構えていてもカレラの気配はしなかった。
ああ、そうかと納得する。
この前、黒い学生服の彼と濃い接触をしてしまったから、鎖の音が耳にこびりついているんだ。
首筋には薄れはしたが、まだ×印が赤紫色の痣として残っている。
彼は言った。
先輩達が嘘つきだと。
夏休みまでに何人の女とヤレるか勝負しているのだと。
黒い学生服の彼は…
そんなホラ話で私の恋路を邪魔しようとした。
潤一先輩は真面目で誠実な人だ。
絶対そう。
見た目からして爽やかだもの。
悠紀先輩だってチャラいけど、そんな酷い事するとは思わない。
美里の好きな人だ。悠紀先輩も信じたい。