縛鎖−bakusa−
それなのに彼は私に忠告してくれた。
この男はウソツキだと真実を教えてくれていた。
それさえ…愚かな私は無視してしまった。
ウソツキは先輩ではなく彼の方だと…
目の前の甘い汁にヨダレを垂らし、判断を誤った。
助けを請う資格はない。
分かっている。
けれど言ってしまう。
「助けて…」
他に縋る物がないから…
彼は私の言葉に驚いたりしなかった。
むしろそう言われるのを予想していたかの様に見えた。
宙に浮く彼は私を見下ろし、待ってましたとばかりにニヤリと笑う。
『イイヨ…だけど、俺の頼みも聞いて貰うから…』
霊体の頼みを聞く…
それはつまり、彼の想いを背負い、自分の寿命を一年縮める事…
迷っている余裕は無かった。
一年分の命と処女喪失を天秤に掛ける暇も、深く考える余裕も無かった。
気持ちの悪い手が太ももを這い回り、体の震えが止まらない。
ただこの不快さと恐怖から逃れたい一心で言ってしまった。
「分かったから…何でも聞くから…
お願い…早く助けて…」