縛鎖−bakusa−
『コロシタイ…
でもそんな力は持っていない。
ただ…生きている人間の中に無理やり入ると、こう言う風になると知っていただけ…』
薄笑いを浮かべながら彼は説明を足した。
今まで何度か憑依を試みた事があるが、
皆こう言う状態になり体を乗っ取る事が出来ないのだと。
無理やり侵入すると魂が攻めぎ合い、肉体が付いて行かないのだと補足した。
生きていると聞いてホッとしていた。
良く見ると死体の様なこの男の肺は、微かに上下していた。
同情はしないが、こいつが死ねば面倒臭い事態になる。
警察沙汰、そんなのに巻き込まれるのは嫌だ。
黒い学生服の彼は、床に転がるこいつの腹を踏み付ける格好で立ち、私に言う。
『学校に戻る。そろそろ苦しくなって来た。
俺の魂は学校に繋がれて遠くまで行けない。
ここはギリギリの距離。
その内君に会いに行く。約束は守って貰う。頼みを聞いて貰う。
…ニゲルナヨ…………』