縛鎖−bakusa−
重たい鎖の音を響かせて彼は消えた。
壁をすり抜け学校へと去って行った。
静かになった室内でハッと我に返る。
そうだ…約束してしまったんだ…
助けて貰う代わりに、彼の願いを聞くって…
犯されそうになった時とは違う比重の恐怖に、ブルリと体が震えた。
何度も繰り返し刷り込まれた母の言葉が頭に響く。
「話しを聞いたらダメ…彼らの想いを背負い成仏させ続けたら…
お祖母ちゃんみたいに……………………………………………シンジャウヨ……」
一人だけ…大丈夫、一人だけならきっと大丈夫。
それ以上の想いは絶対に背負わない。
祖母や母の様にはならない。
気をつけていればならない…………多分。
無理やり自分を納得させて体の震えを止めようとした。
けれど心のどこかで分かっていた。
その一人が…初めの一人が……
取り返しの付かない恐怖の始まりではないのかと……
――――――…