縛鎖−bakusa−
 


そうして彼の精神は後戻り出来ない闇の中に堕ちてしまった。



希望の光はどこにもない。

生きる事に意味を見出だせない。



水谷徹は鎖をジャラジャラと鳴らし、ゆっくりと教室内を歩き回り私に話す。



『今思えば…後悔している。自殺の道を選んだ事を後悔している。

言えば良かったんだ。助けて欲しいって。

親にでも教師にでも全く知らない第三者でも誰でもいい。

一言いえば未来に道は伸びていたはず。

後悔してるよ。

けど…あの時はそうは思えなかった。

絶望の淵で死ぬことしか見えていなかった』




水谷徹はそうして自殺した。

学校の生徒が全員帰宅した後の真っ暗な教室で、

一人首を吊って絶命した。



死に場所を教室に選んだのは、怨む気持ちがあったから。



理不尽な虐めを与えたクラスメイトに知らしめたかった。

自分を殺したのは君達なのだと…



< 63 / 159 >

この作品をシェア

pagetop