縛鎖−bakusa−
3
山本と言う女教師は現在うちの高校にはいなかった。
私が持っている情報は、15年前にうちの高校に在籍していたと言う事実だけ。
さて、どうするか…
取り合えず先生達に片端から聞いて回った。
「知っていますか?」と。
すると以外とあっさり知り合いに辿り着く。
教師の世界と言うのは案外狭いのかも知れない。
知っていたのは、もうすぐ定年を迎える現国の男性教師。
老眼鏡を押し下げ、裸眼で私を見ながら言った。
「ああ、山本ね。わしがこの学校に来る前の職場が一緒だったよ。
彼女は確か…結婚して…何だったかな…
や…や…そうだ矢野だ。矢野陽子。名前が変わったんだ。
矢野先生がどうかしたのか?」
「はい…
矢野先生の昔の教え子と最近知り合って、どうしても伝えたい事があるから捜して欲しいと頼まれました」
「ほー、そうかそうか。恩師に会いたいと言う生徒がいるのか。
いや〜わしもな、最近昔の教え子が会いに来てくれてな…………―――」
嬉しそうな顔して話す現国の先生は、勘違いしていた。
恩師なんかじゃない。
怨師と書くなら当たっているが。
勘違いしたまま目の前の先生は話し続ける。
最近会いに来た昔の教え子に感謝され、先生のお陰で今の自分があると言われたのだと私に自慢する。