縛鎖−bakusa−
後ろから小太りの男性教師が私を止めようと追い掛けて来る。
でも私の方が足が早く追い付かない。
捕まえられる前に2のBに着き、躊躇いなく前のドアを開け中に入り、中から鍵を閉めた。
閉めたドアがガタガタと揺らされ、
「こら!開けなさい!」と声がする。
後ろのドアの鍵は開いているのに…
馬鹿…?でも邪魔されないのは好都合。
現国の授業中だった2のBの生徒全員が、私に注目し静まり返っていた。
突然飛び込んで来た他校の女子生徒にドアを叩く音。
驚いた顔の生徒達は微動だにせず私を見ている。
恥ずかしさは全くなかった。
今私を動かしているのは、「クヤシイ…」と言う彼の感情だけ。
教壇に立つ女性教師にツカツカと歩み寄る。
「誰?どこの生徒?
勝手に入って来たら困ります。出て行きなさい」
チョークを片手に板書の途中だった彼女は、こっちに体を向けて怪訝そうに私を見た。
小柄な体型、ショートボブで快活そうな女性。
この女が水谷徹の怨師…
こいつがノートを……