縛鎖−bakusa−
やっと諦めたのか…
それとも憑いてこれない理由があるのか……
どんな理由にしろ悲しい声から解放されて、ホッと息を吐き出した。
動き出したバス。
車窓に目を遣ると、いる…いる…。
さっきの彼の姿はもう見えないが、雨降りの今日はいつもよりも多くの霊体を目にした。
私の目に映る霊達は、皆足首に鎖を付けていた。
成仏出来ずにこの世をさ迷っているのは、何らかの心残りがあるから。
そして、その心残りが鎖の形となり私の目に映るのであろう。
彼らの鎖は足首から伸びて宙に消えていたり、地面や建物に繋がれていたり様々だ。
鎖の先が宙に消えている霊体の行動範囲は割と広く、
建物や土地に繋がれている霊体はそこから動けない。
地縛霊、浮遊霊、そう言う違いなのだろう。
美里に手を振り先にバスを降りた。
一人雨の中を家路に向けて歩く。