縛鎖−bakusa−
大人の男性の声だ。
年齢にすると20代から30代くらいのまだ若い感じ。
心の鎖について言われ、ギクリと足を止めてしまった。
この鎖はカレラに見える物なのか?
もしかして…
鎖について何か知っているかも知れない。
例えば外し方とか…
そんな都合のいい考えが頭に浮かび振り返りそうになった。
しかし思い直して足早に立ち去る。
ダメだ。
カレラに頼ろうとするなんて、私はどうかしている。
仮に今背後にいる霊体が鎖の外し方を知っていたとしても、話してはダメだ。
カレラは自分の願いを叶える為に私を利用しようとする。
これ以上命を縮めるのは嫌だ。
心の鎖、水谷徹の残した鎖については自分で考える。
歩く速度をどんどん速める。
数メートル背後に憑いて来ていた見知らぬ彼は、諦めて離れて行った。
『君の鎖の外し方…シッテルヨ…』
と言葉を残して…
―――――…
それから数日間、心に巻き付く不快な鎖の外し方について考えていた。
けれど何も思い付かないまま時間だけが過ぎて行く。