縛鎖−bakusa−
『君の鎖の外し方…シッテルヨ…』
あの霊体が言った事は本当だろうか?
接触してみる?
いやダメだ。
きっと教える代わりに願いを叶えてと言ってくるに違いない。
カレラの透明な頭の中は、自分の鎖を外す事で一杯。
利用されるだけだから話しをしてはダメなんだ…
――――…
今日は夕方になって幾らか涼しくなってから買物に出た。
こう暑い日が続いては特売品がどうとか言ってられない。
暑い日差しの中は歩きたくない。
空が茜色に染まっていた。
夕暮れの濃い時間だが、蝉達は日中と変わらず鳴いていた。
ミンミンと煩い余計に暑さを感じる声を聞きながら、いつものスーパーマーケットに行く。
夕方のレジに立つのは少し太めのおばさん。
いつもの笑顔が素敵な若い女性はいなかった。
彼女はきっと早い時間のシフトなのだろう。
いつもの笑顔と「お使い偉いわね」との言葉が聞けない事を少し残念に思いながら店を出た。