縛鎖−bakusa−
片道二車線のバス通りから狭い脇道に入り5〜6分歩くと、小さなトンネルにぶつかる。
盛り土をした土手の上を走る線路。
その土手に奥行き10メートル程の短いトンネルが掘られている。
バスやトラックなど大型車は通れない。
高さはワゴン車がギリギリ、幅は車一台と人二人分位。
狭く短く小さなトンネル。
ここを通らないと家に着かない。
このトンネルも雨と同様に嫌いだった。
どうしてトンネルと言う物は霊体を引き付けるのであろうか。
こんなに小さなトンネルに、晴れの日は3〜4人、
雨の日は7〜8人の霊体が留まっている。
一時期、このトンネルを通ると吐き気がするとか頭痛がするとかケガをするとか…そんな噂が流れた。
トンネルを埋めて線路を跨ぐ高架橋を作ってはどうかと言う意見が出たが、
そんな金どこにあると言う話しだ。
この先には我が家を含め数十世帯の家屋がある。
気味が悪いが大切な生活路であるトンネルを潰す訳には行かず、
結局そのまま何も変わらずここに存在する。