縛鎖−bakusa−
「お店の外じゃ案外気付かれないのよね。
ふふっ あなただけじゃないわ。
こっちは馴染みのお客さんだと思って挨拶しても、首を傾げられる事が良くあるの」
「私もすぐには気付きませんでした。
週に数回見ている顔なのに…おかしいですね、アハハッ」
そんな会話をして笑っている私を、小さな男の子が彼女の後ろに隠れながら見ている。
ひょこっと頭を出してジーッと私を見て、目が合うと引っ込む。
それを繰り返す仕草がとても可愛らしい。
「お子さんがいたのですね。若いから以外です」
「あら、女子高生に若いって言われちゃった。
ふふっ あなたに比べたら十分おばさんよ。
今日もお使い?いつもエライわね。
私は高校生の時は家の手伝いなんてちっともしなかったわ」
ただのスーパーマーケットの顔なじみである彼女に、
「母が死んでいないから…」とは言えなかった。
わざわざそんな暗い話しをする必要はないと思い、曖昧に笑ってやり過ごす。