縛鎖−bakusa−
『うん、幽霊になってからリサーチして歩いたからね。
他の幽霊達に話し掛けてみたり、生きている人に触ろうとする幽霊の側で何が起きるのか観察したり。
気になるだろ?
自分が生きている人達にどんな影響を与えるのか。
他人に迷惑掛けたくないから、何をしたら危険なのかは知って置かないとね』
「そうですか。
霊達はみんな怨念に動かされ、自分の鎖を外す事しか考えられない物だと思っていました。
すみませんでした」
『分かってくれたらいいよ』
そう言って彼はまた笑う。
それから勝手に自己紹介を始めた。
彼の名前は沢村幸則(ユキノリ)享年齢は30歳。
一年と少し前に急性心不全で亡くなったのだと彼は言った。
さっきの親子はやはり彼の妻子。
女性の名前はミカ、息子の名前はリクと言うそうだ。
『僕が突然死したせいでミカには苦労させてしまった…
リクにも淋しい思いを…
でもね今は二人とも幸せなんだよ。
新しいパパが出来てさ、その人僕の親友だった奴。
安定した生活の中で二人が笑っていられるから良かったよ。
欲を言えばもう少し収入があれば、ミカはパートに出ずにリクと一緒にいられるのだけどね。
まぁしょうがないか。アハハッ』