過保護な妖執事と同居しています!
ザクロは腰を落として私を背中から下ろす。そして私の手を取り、岩の端まで導いた。
「頼子、こちらへ。下をご覧ください」
えー? 足がすくんでお尻のあたりがむずむずするんですけど。
顔をひきつらせながらも嫌々ザクロの指さす方角に視線を向ける。
山の麓には清司の家の神社があり、その少し上に当たる山の中腹が真っ白に色づいていた。
「え、なにあれ。花? なんの花?」
「白梅です。この山にある禁域の周りには梅の木がたくさん植えられていて、毎年この時期に真っ白な花を咲かせます。この景色を頼子に見せたかったんです」
桜の季節には神社で小さなお祭りがあるから、桜があるのは知っていた。けれど神社とその裏にある林の陰になって、麓から梅の木は見えない。
禁域の周りということは、神社関係者しか知らないのだろう。上からしか見ることのできない絶景に私は興奮する。
「すごーい。きれーい。ザクロ、ありがとう」
「どういたしまして」
満足そうに微笑んだあと、ザクロは私の手を引いて岩の真ん中まで移動した。
「少し、ここでお待ちください」
そう言い残して岩の上から飛び降りる。また何か持ってきてくれるのかな。去年の年末にもらった柿はトロトロでおいしかった。さすがにもう柿はないだろうけど。
少しして戻ってきたザクロの手には白い花を付けた梅の小枝が握られていた。