過保護な妖執事と同居しています!
家に帰り着くと、鍵を開けている間にザクロはいつの間にか消えている。
そして扉を開けるとそこにいて、恭しく頭を下げるのだ。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
これはたぶん、執事を演じているのだろう。
玄関にはデミグラスのおいしそうな匂いが立ちこめていた。思わず頬が緩むのと同時にお腹がなった。
「わぁ、ビーフシチュー作ったの?」
「はい。頼子がお好きなようですし」
「へ? なんで知ってるの?」
「料理の指南書に印がついていました」
「指南書……」
そういえば、はるか昔に作りたいと思って、好きなものに片っ端から印を付けたような気がする。
結局作ったかどうかすら覚えていないが。
「夕方に作ったので冷めてしまいました。温めなおします」
「うん。ありがとう」
私はその隙に着替えて化粧を落とす。ホッと一息ついた時、キッチンの扉が開いて、食事の載ったトレーを持ったザクロが現れた。
「お待たせしました」
テーブルの上に置かれた食事を見て、私は目を細める。湯気の立つビーフシチューの他に、小さなロールパンがひとつと、エビとキノコとキャベツのマリネが少し添えられていた。
残業で遅くなったときには、食事の量を少な目に調整してくれるのだ。
おいしい夕食に幸せをかみしめながら、ふと何も関係ないことが気になった。