過保護な妖執事と同居しています!
私が密かに苦笑している間に、話はまとまりつつあった。
「では、誓約は撤回してよいな?」
「はい」
「そのかわり、当初の予定通り、娘との絆が切れた折りには必ずここに来い。加えておまえの妖力を半分もらう。そうしておけば悋気(りんき)(嫉妬)で人を傷つけたとしても大したことはできぬだろう」
「ありがとうございます」
無事に誓約は撤回されたようだ。
深々と頭を下げるザクロを見つめながら、清司が安心したように深く息を吐いた。
「やれやれ」
そして着物の懐から小刀を取り出し、後ろで結んだ自分の髪を根元からばっさりと切り落とす。それを頭上に向かって放り投げた。
「水蛇、これで勘弁してくれ」
清司の頭上で旋回していた白い大蛇は、放り投げられた清司の髪束をパクリと大きな口でキャッチする。そして身を翻し、雲の渦の中に消えて行った。
空を覆っていた暗雲が散り、雲間から日が差し始める。
空を見上げていた清司がこちらを向いた。目の前の結界に向かって手刀を真一文字に振る。その直後、結界が作り出していた光の壁が消えた。
ザクロは少女に歩み寄り、上向きに広げられた彼女の手のひらに自分の手のひらを重ねる。重ねられたふたりの手のひらが一瞬目映く光り、そしてすぐに光は収束した。妖力を半分渡したのだろう。
振り向いたザクロが心配そうな表情で、小走りに私の元へやってくる。私は夢中で彼を抱きしめた。
ザクロもためらいがちにそっと私を抱きしめ返す。