過保護な妖執事と同居しています!
ザクロは繭を触った人の望む姿に変化すると言っていた。触ったのが男だったらどうなるんだろう。
「ねぇ。ザクロって女の人にも変化できるの?」
「見た目だけなら可能ですよ。一度しか変化したことはありませんが」
「え? 一度だけなの? 触ったのが男の人だったら理想の女性とかを望むんじゃないの?」
「男に触られたことはありません。私の繭は女性にしか見えませんので」
てことは、ザクロは女性を好んで宿主に選んでいるということになる。
性別はないのかと思っていたが、もしかして——。
私の疑惑を察したのか、ザクロはにっこり微笑んだ。
「私は男性体です」
見た目だけじゃなく、本当に男だったようだ。
「お望みでしたら、夜のお相手もつとめさせていただきますよ」
「いや、お望みじゃないから」
そんなニコニコしながらサラリと事務的に言われても、ぜんぜんそんな気になれない。
だいたい私はもう男なんていらないんだから。あんな面倒くさい生き物。
うっかり去年のことを思い出して、イラッとする。
食事を終えてもイライラを引きずっていたら、目の前にハーブティが差し出された。
鼻孔をくすぐるカモミールの甘い香りに、少し気持ちが和らぐ。
見上げるとザクロが穏やかに微笑んだ。
「どうぞ。心が落ち着きますよ」
私が苛ついている理由なんて、ザクロにはわからない。けれど、苛ついていることはちゃんとわかっていて、いたわってくれる。
うん。なかなか理想の執事になってきたじゃないの。時々とんちんかんだけど。
「ありがとう」
私はすっかり機嫌を直して、ハーブティのカップに口を付けた。